未分のレポート

現実との距離感

渋谷ヒカリエにある小山登美夫ギャラリーにて7月20日から8月5日まで国川広の個展「未分のレポート」が開催されている。新作の絵画やドローイングなど17点を展示しているが全て空間に佇むヌードの人物をぼんやりとした輪郭の曖昧なタッチで描いている不思議な作品だ。自分自身と現実との距離感を探るような試みを作品にしているというが独特の世界観はインパクトがあり一度見たら忘れない感じの作品だと思った。日頃の営みの中で「ものを見る時に見たものが見たままに見えることは案外少ない」とは作家の言葉だが目の前の見ているものに想像のようなものが重なって見えるような気がするのだという。見るものの中に潜む「楽しい」とか「暑い」「寒い」といった表現しがたい気配のようなものまでをも描きこむ実験的な作業がこの独特な絵画を生み出すのだ。薄くした絵の具を塗り重ねるようなぼんやりした輪郭の描き方や色使いの色彩感覚も実に独特で未知なる才能のようなものを感じる作家だと思った。

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油絵の具を薄く重ね塗りしつつぼんやりとした輪郭の絵を描く。

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裸で本を読む人?独特のタッチが印象的である。

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野外に腰掛ける裸婦像だろうか、色彩感覚も独特でいい。

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こちらもやはりヌードの人物だが目に見えないものを描く試みだ。

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室内にいてピアノを弾いたり横になったりしている人々。不思議な世界観だ。

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薄いグレーの暖色と寒色が絶妙なコントラストになっている。