「Fantasy land」
夢の中の国
六本木の小山登美夫ギャラリーにて7月22日まで桑原正彦の個展「Fantasy land」が開催中だ。1997年に初めて開催された「棄てられた子供」展以降、小山登美夫ギャラリーでの個展は10回目になるそうだ。桑原氏は1959年生まれ、子供の頃は高度成長期の日本でありそこには恐ろしいまでの速度で変化していく世界があった。石油化学製品が溢れ、大量生産大量消費の世の中では公害やゴミ問題など急速な成長による問題も発生した。そんな時代背景が桑原氏の表現の原風景となっているという。子供の頃の夢の中の風景、夢の中の国がそこに繰り返され描かれるのだ。
悲しさとユーモア
見渡す限り広がる同じ形の団地や集合住宅の殺風景さ、消費され棄てられる人形、汚染された川とそこに現れた奇妙な生物、そんな殺伐としたもの哀しい風景は悲しさとともにユーモアのある手法で描かれる。極端に濃淡の薄い世界、遠い記憶の中でぼんやり存在したその世界は現代を生きる我々がふと感じることのある空虚感や不安感と共鳴するかのようだ。桑原氏の絵はなんとも不思議で変なのであるが独特の味わいがある作品だと思う。
濃淡の少ない世界に立つなんの変哲も無い建物は殺風景だ。
汚染された大地に現れた奇妙な生き物たちだろうか?
名もなき人形たちはいつのまにか棄てられてしまった。
奇妙な眼差しでこちらを見る人形はちょっと不気味である。
遠い昔、子供の頃に見た夢の国にある建物に雪が降る。