荒く有機的な陶芸

日本初の個展

4月3日まで渋谷ヒカリエ小山登美夫ギャラリーにてフェルナンド・カサンペーレ展「痕跡ー記憶」が開催されている。ロンドンに拠点を置き制作活動を続けるチリ出身のアーティストの日本初の個展だそうである。陶芸の可能性を追求するような有機的なフォルムの陶芸作品は大自然のように美しくその存在感は圧倒的だ。また、流れるようなマーブル模様の独特の彫刻には亀裂や空洞といったものが含まれ特徴的な作品となっている。

 

ロンドンに暮らして

チリのサンティアゴに生まれ育った作家はプレ・コロンビア期の美術工芸や遺構に魅了され、それらを現代アートの文脈で再解釈し新しい造形へと発展させて来た。チリでは銅の鉱山での過剰な採掘によって鉱山が荒廃するなどの深刻な問題があるが、環境問題にも強い関心があ作家はロンドンにいるにもかかわらず採掘後に破棄された母国チリの土を使って作品制作をしている。母国よりもひらかれたロンドンの環境に暮らすことでラテンアメリカの芸術や要素を論理的かつ多角的に捉えて作家活動が出来るのだという。一見荒々しく、しかしその奥に深い美しさを秘めた作品にはじっくりと向き合うことをお勧めしたい。

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重く存在感を示しながらそこに存在する作品は圧倒的パワーである。

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作品が置かれた台座にもかなりこだわっているように見える。

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ギャラリー内に配された作品の佇まいには和石庭のような趣さえある。

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白い箱形の作品の中には骨のような作品が沢山詰まっていた。

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壁に張り付いた自然の土に描かれた太古の絵のような陶芸作品だ。

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白い表面に走る無数の亀裂は自然の美しさを凝縮したようでもある。