植物や鳥の視点

繊細な切り口の作品

天王洲アイルにあるユカ・ツルノ・ギャラリーにて225日まで狩野哲郎の個展「a tree as a city」が開催中だ。作家は生物学者のフォン・ユクスキュルの環世界の概念をもとに身近な生物がそれぞれの知覚によって見出す世界の多様性に興味を持っているそうだ。植物や鳥などの「他者の視点」を作品に込めるというアプローチは繊細な切り口であり、また大胆な試みでもある。よく動物は人間とは違う知覚でこの世界を感じているというが想像するのは難しい。そういった想像するのが難しい感覚を作品を通して表現しようとしているところが面白いと感じた。

 

既成の価値観は残しつつ

作品を見ると木の枝やガラス、家具の一部、釣り糸や、浮きなど様々なものが組み合わされてモービールのような作品やオブジェ、彫刻、絵画などが制作されている。見た目は非常に不思議で木の枝を集めて作られる鳥の巣や蜘蛛の巣のような自然の中にある他の生物によって作られたものを連想させる。しかし、本質的には絵画や彫刻としての既成の構成はしっかり残しているので作品としても成立しているように思われた。視点を変えてみるというのがこれほど面白く創造的な取り組みになるものだと考えさせられる作品だ。

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ガラスと枝と糸で作られたオブジェは不思議な魅力を放つ。

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森に自然界の生物が作った偶然のモビールのようだ。

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不思議なオブジェだが作品として成立しいているところが面白い。

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絶妙なバランスと素材のミックスが計算されて作品になる。