捕まえないように追いかける絵画。

淡い色彩の奥深さが魅力的な作品。

渋谷ヒカリエ小山登美夫ギャラリーにて柏原由佳「空目つむぎ」が10月10日まで開催されている。

風景画なのだが油絵の具を薄く溶き、何層にも重ね塗りしながら完成させるという独自の手法で描かれている。

沼や洞窟、山、湖などどこか夢の中の風景のような不思議な感情を呼び起こさせる絵だと思う。

 

ドイツに暮らす作家の心象風景なのか。

これらの不思議な風景画の作家の柏原由佳はドイツに住んでいるのだそうである。

彼女にとって日本とドイツの物理的な距離や精神的な違いの距離を探る行為が絵画を導き出す。

風景を見て描くのかどうか分からないが見ていたとしても描かれるのは彼女にしか見えない風景なのだろう。

 

「空目」という面白い言葉。

展覧会のタイトルにもなっている「空目つむぎ」の「空目」とは「空耳」の見る版?とでも表現すれば良いのか。

「そこにないものを見たと認識する」または「見えているものを見てないふりをする」という意味合いがあるようだ。

「空目つむぎ」は作家が日常の出来事や記憶といった捉え様のない風景をつむいでゆく作家の制作への独自の視点を意味する造語となっている。見る人によって変わる風景、それは風景を見つつも実はそれぞれが内面を見つめているからなのかもしれない。

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独特の油絵の具のうす塗り技法は夢の中の世界のような感じだ。

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沼なのか池なのか、どこにあるのか?不思議な感覚になる。

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どこかにあるのか、ないのか分からない風景「空目」をつむぐ。