どこへでもこの世の外なら
抽象表現の世界
六本木のタカ・イシイギャラリーにて3月17日までクサナギシンペイの絵画展「どこへでもこの世の外なら」が開催されている。抽象画の作品だが作者はカンヴァスにスティン(にじみ)の技法で色を重ねることによって豊かで透明感のある色彩の絵画を制作する。抽象表現の世界は対象を抽象化して作品とする表現方法だがこれは非常に難しく作るものにとっては作品を抽象的な方法で描ききるタイミングをどこで終わらせるかという永遠の問題がある。
画面から得る印象
かつてアメリカの作家、ジャクソン・ポロックはカンヴァスを床に置いてそこに絵の具を垂らすという方法で抽象絵画を制作してセンセーションを巻き起こした。沢山の絵の具がカンヴァスに垂れている様は当時それを見る多くにとってはわけの分からない世界に映ったかもしれない。抽象画の見方は「画面から得る印象」に尽きるのだが、表現者にとってはただのめちゃくちゃなどではなく様々な表現の必然性や美的要因を感じながら描き進める表現方法となる。そこがしっかりしていないと絵は成立しないしめちゃくちゃはそのまま破綻するのである。そのコントロールが非常に難しく、また抽象的なだけにその表現の真偽もすぐにバレてしまうものだ。クサナギシンペイの抽象表現はそういう意味で美しく本物だと思うしこれからも非常に期待できる作家だと感じた。
スティン(にじみ)の繰り返しの中に絵の本質が現れる。
最近ではにじみの中に即興的なブラシストロークも加わった。
様々な色が重なり合い画面構成や色相などの広がりを感じる。
青と濃紺のコントラストの表現が美しい作品だ。
抽象画では見たままの印象を味わい感じるものを楽しむ。
本物の表現か否かが誤魔化せないのが抽象画の特徴である。
様々な色や形の重なりは必然性と美意識の結果として現れる。