「見る」の分岐点
4年ぶりの個展
9月の16日まで白金にある児玉画廊で4年ぶりとなる中川トラヲの個展「Break Even Point」開催されている。児玉画廊は定期的にテーマ縛りのブループ展を開催していて中川トラヲも参加しているのでちょくちょく作品は見てきたが今回は個展とあって彼の作家としての新たな試みを十分に見ることができる。
展覧会タイトルの「Break Even Point」は本来は「損益分岐点」という意味だがここでは作家の「見る」という行為を作品化してきたコンセプトを表している。つまりそれは「見る」という行為はなんなのかという普遍的な問いである。それは「見る」ことで得るものと失うものが等しくなる地点、見えると見えないの臨界点、または絵画と絵画でないものの分岐点なのかもしれない。今回は今までのベニヤにアクリルで描く抽象画ではなく、額に不規則にマウントの窓をくり抜きそこから絵が見える作品や、モデリングペーストを分厚く重ねた土台の裏に木枠をつけてそのモデリングペースト上にイメージを描くなど新たな表現方法も披露している。中川トラヲという才能豊かな作家の新作は注目である。
額のマウントに不規則に開けられた窓から作品が見える仕掛けだ。
色のセンスは抜群だと思うし線や形も面白い。
石膏のようなジェッソの表面に施した絵の具は浸透した感じになる。
重ねて塗られた色が新たな表面のテクスチャーを生み出す。