物質と概念の狭間で
初めて見る作家
恵比寿にあるMA2ギャラリーにて大西伸明の展覧会「Through the looking-glass, and what she found there」を見た。初めて見る作家だったが卓越したテクニックとしっかりしたコンセプトを持って制作活動を続けている作家さんだと知った。今回の展示では銅を型に流し込んでから磨き上げたオブジェやモナリザをシルクスクリーンで刷った後で顔の回りをぼかすという面白いプリント作品などが展示されていた。
物質とその背後の概念
彼の制作スタイルは実際にあるものをモチーフに制作されるのだが他の作品をカタログで見るとプラスチック素材で作ったガソリンの缶に半分まで本物のような着色をした作品などもある。リアルなものの半分が透けたプラスチックに変化して行く様は実に不思議だ。今回の展示でもギャラリーの壁や床に展示された銅製のオブジェは不思議な輝きを放っていた。骸骨は半分に切り取られ内側は輝く銅で外側はマットな白の塗装が塗られている。物という物質の存在と存在という概念の間を行き来するようなコンセプトは卓越したテクニックで見事に美しい作品へと仕上がっていた。
モナリザをシルクスクリーンで刷った後で顔の回りをスプレーでぼかす。
不気味に、しかし美しい骸骨の頭は内側が銅で輝いている。
丸い手の形はルネッサンス絵画の女性の手か如来像の手を思わせる。
銅を型で成形してから磨き上げて光り輝かせるのだそうだ。