擬態する絵画

マスキングテープかと思いきや

 

11月5日まで児玉画廊で大槻英世による展覧会「Horizons」が開催されている。

キャンバスの上に剥がし忘れたマスキングテープがそのままあると思いきやなんとそれも絵なのだった。作家は本来は絵画制作で使う裏方的なマスキングテープを敢えて絵として描くのである。しかし、よく見てもどこから見てもそれは本物のマスキングテープ以外には見えないから驚きだ。

 

マスキングテープの擬態を作る

眼を凝らしてみるとマスキングテープのかすかな厚みや透け感、端のちぎれた感じなど徹底的に描き込まれている。作家みずから擬態と呼ぶその技術の完璧さと描き切ることへの作家の執念のようなものを感じずにはいられない。

しかし、知らずに見た時にはなんかシンプルで殺風景な絵なのに訳を知るとびっくりする絵である。

 

リアリズムではない絵画

しかし、本物のように見せかけて描いているこの絵画は「描かれたものでない」ように見せたいリアリズムではない。実際はその逆で絵の具を物質として扱い「描かれたものに」こだわりまくった絵画なのである。

そのことから作家はこのマスキングテープ絵画を「擬態」するというのだろう。

それにしても児玉画廊は地味なようでいて実は面白い作品を作る作家を大事に育ててすばらしい。

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無造作に黒いキャンバス上に描かれたマスキングテープ。

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見た目はテープで繋げられていると思えても実は全て描かれている。

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破れた袋などを繋ぎ合わせている感じがリアルだが絵画です。

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ギャラリーに可愛い猫がいました!アート鑑賞中?アートの一部?