網膜で感じる「絵でしか表せない世界」
絵が好きな自分にとっては心惹かれる展覧会。
白金にあるARATANIURANOギャラリーにて8月6日まで坂本夏子の展覧会「画家の網膜」が開催されている。
デジタルを駆使したメディアアートなど様々な表現方法が現れる昨今だが自分は手で描かれた絵が好きだ。
新しいもの好きな方には古くさいと言われるかもしれないけれどキャンバスなどに丹念に描かれた絵が一つの存在として好きなのである。
そんな、とにかく絵が好きな自分にとってこの展覧会、「画家の網膜」にはとても心惹かれる。
「画家の網膜」とはいったいどういう意味なのか。
坂本夏子さんは一貫して「絵でしか表せない世界」を描きたいと唱え続けて来たそうだ。
絵画という世界でしか存在しない世界、絵という手法でしか表現出来ない作家が心で見た独自の世界。
そんな風景を「絵でしか表せない世界」として描こうとしているのだろうか。
絵とはすでにあるイメージを表出するのではない。
この展覧会に寄せた作家のメモを読んでみるとその意図が分かって来る気がする。
「わたしにとって絵とは、すでにあるイメージを表出するためのものではなく、未だ無い空間にふれるための方法なのです。」
作品は日頃ノートに描くドローイングやメモ、落書きなどから絵が生まれるそうだ。
それらをキャンバスに向かって描くことで絵の世界と結びつけ描き進めながら絆を深めて行くのだ。
例えば、どんなに写実的な絵であってもそれは絵であって現実ではない、作家の見た世界なのだ。
この展覧会を見ながらそんな基本的なことに気づかされ見たものを表現するという行為の深さと不思議さを感じた。
ところで、9月からARATANIURANO含むいくつかのギャラリーは白金から天王洲アイルに移転するそうだ。遠くなるなあ。。。