Between Dimensions

見間違えの仕掛け

天王洲アイルにある児玉画廊にて6月1日まで石場文子の展覧会「次元のあいだ」が開催中だ。以前に白金の児玉画廊のグループ点でも彼女の作品を見たが実に巧妙で面白い見間違えの仕掛けが隠された写真を見せてくれて印象に残っていた。人がものを見る時に見間違えることがたまにあるがそれは認識する我々の様々な原因から発生することが多い。見る側は今までの経験をもとに物を見た時にそれを識別または認識するのだが今までの経験にない要因が隠されていた時にその見た目に騙されて見間違えてしまうのだ。この作家の写真作品は一見すると日常の当たり前のものが並んでいるだけなのによく見るとふと違和感を感じさせる。見るものは写真という本来なら真実をそのままに映し出すはずのものがどこか違うことに目を疑う。これはコラージュかまたは絵なのかと不思議な感覚に襲われるのだがそれはそこに写っているものが不自然な黒い輪郭線で囲われていたりするからだと気がつく。しかし、この作家の作品の面白いところはそれが我々が推測するようなコラージュでも絵でもなく紛れもない写真であり、不自然に思わせる輪郭線は撮影されるものにあらかじめ直接描きこまれて撮影されたという点である。2次元的な要因を3次元のものに直接描き込んで写真を撮ることでこの目の錯覚のような効果が得られるのである。もちろん、写真作品としてのクオリティーや物の配置、構図などのセンスの良さもこの作品を高い完成度に仕上げている。

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さりげなく干された洗濯物だが白い靴下だけ黒い輪郭があり違和感がある。

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壁際に置かれた植物も輪郭線でコラージュのように見える。

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タバコと吸い殻の入った灰皿だが輪郭線で絵のように感じてしまう。

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洗面所の洗面台やコードなどに普通ではない違和感を感じる。

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この写真でも壁際の線とガラス瓶の縁の黒い線が錯覚を生む。

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雑然と並ぶプラントや紙くずだが黒い縁のものだけ浮いて見える。