漫画とアートの文脈の狭間で

祈り、願う巡礼者達

恵比寿にあるFmギャラリーで開催されている寺本愛の個展「Pilgrims」を見てきた。

個展のタイトルは日本語にすると巡礼者であるが描かれた人々は祈りや願いをしている。これらは作家が四国のお遍路に触れた実体験を元に祈る人々というテーマで描かれているのだ。また、彼らは緻密に描かれているが皆が個性的なファッションに身を包み特徴的な目をしている。一見すると目の中に黒目が3つ並んでいるような奇妙な目で不思議な無表情でたたずんでいるのだ。

 

ファッションイラスト?アート?

作者の寺本愛はイラストレーターとして活躍する一方でアーティスト活動もしているという。また、大学では服飾学を学んだそうでここに描かれている個性的なファッションも作家の創作だ。絵にはイラストのようなスケッチのような漫画のようなアートのような見たことのない絶妙なミックス感があると思う。

 

漫画とアートの狭間に

インクでシャープに描かれた部分は漫画っぽいが鉛筆で描かれた部分はスケッチ風、絵全体から受ける印象はイラストの様でもあるし独創的な世界観はアートとも捉えられる。よく見てみると、とても独特な世界を表した絵であるし様々な文脈の新しい融合がなされているようにも思える。

 

まだ20代の若い作家

聞けばまだ20代の若い作家だというがそこにこの絵が生まれた背景があるのかなと勝手に推測してしまった。漫画、それもリボンみたいな少女漫画で育ち、ファッションも大好きな作家はアートと出会った。作家にとってはどの文脈など関係なく自分の中で蓄積してきた様々な感性を絵として結合した結果がこうなったのではないか。黒目が3つあるのは少女漫画に出てくる目にキラキラと星が描かれる表現の作家なりのアート版なのかもしれない。作家はアートとは何か、漫画とは何かという表現の狭間を行き交いながらこうした奇妙な人物を描いているのではないか。展覧会は10月23日まで開催中。

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着物のような服?を羽織り子供をおんぶして変わった棒を持つ女。

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肩にかけられたショールにはお経が刺繍されている。

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昔の人のような箱の荷を背負う若者、巡礼しているのか。

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服飾学を学んだ作家が創作する不思議なファッション。

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幾重もの着物をまとい荷物を背負いながら手で顔を覆って泣く女。

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