淡く儚い隣人の影
7月2日まで白金の児玉画廊で和田真由子「隣人」展が開催中だ。
彼女の作品はグループ展で見たことはあるが今回は個展なので数多くの作品を一度に見ることが出来た。
淡く儚い影のようなイメージはキャンバスではなくビニールシートの上に鉛筆などで描かれている。
そしてそのビニールシートはキャンバスの木枠のストレッチャーの様な装置の上にだらりと垂れかけられる。壁面に設置された木枠の上に平然と垂れかけられたビニールのイメージは透けているのでレイヤーとなって立体的にイメージを見せてくれる。
また、照明を受ける垂れたビニールのしわはイメージに独特の表情を与えているようにも思う。彼女は頭に浮かんだもののイメージを記憶を頼りに描くのだという。
そうすることによりそのイメージは具現化され見るものに伝わる。
イメージにボディーを与えると語るその手法は頭の中に存在する図像を可視化させるという作業。個々が勝手に頭の中で描いている馬や植物、犬などのイメージは様々である。彼女は作品を通して彼女にとってのそれらを表現しボディーを与えるのだ。
ビニールに近づいて見ると表面には筆で塗られた質感が見て取れるがこれは透明の塗料で作られた独特のテクスチャーである。そこに描かれる淡いイメージ、垂れ下がったビニールの儚さ、重なり合うイメージの放つ偶然性にも似た面白さ。
隣人と題されたこの作品は誰の頭の中にも図像としてだけ存在するもの達に小さな命を与えたような不思議な佇まいの作品だと思う。